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fools singing poetry for all love

1.fools singing poetry for all love

今回のアルバム一曲目を飾るこの曲は、当初はタイトル曲の予定でした。短く、他の曲と比べて一見派手さはありませんが、オープニングにはふさわしい曲ですね。

構成を見てみましょう。メインの楽器はピアノで、終始このピアノが全体を印象付けています。

進行はわかりやすく、ト長調のバロック風に流れていきます。お好きな方はお気づきかと思いますが、これはまさにJ.S.バッハを大いに参照しています。そもそも、この曲を書いている最中は歌をつけるつもりはありませんでした。ピアノ曲として作ろうと思っていたのです(実際に作ったわけですが)。

…これはそれなりに大変な作業でした。バロック時代の曲を聴くことはあっても、真似て作ろうとはしないものです。ある意味これは実験であり、研究であり、挑戦でもありました(結果1:ゴルドベルク変奏曲がいかに素晴らしいかということを再確認させられる)。とはいえ、とても有意義なものでした。

結果をこのような形で皆さんにも聞いていただけることを嬉しく思います。

ピアノ以外の楽器は歌を除いて、手拍子とシンセベースとその他パーカッションです。手拍子は複数のパターンが鳴っていますね。パーカッションも含め、これらは基本的に表の拍子を強調するものです。

シンセベースは、部分的に低音を補う役割を持っていて、声部としてはあまり機能していません。そもそもとして、ピアノ単体ですでに充足しているので、他のメロディーが入る余地はあまりないのです。

突然ですが、ここで少し寄り道をしましょう。

愚者のカードというのは、タロットカードの中でも特に有名なものだと思います。タロットに親しみがない方でも聞いたことがあるのではないでしょうか。英語名は”The Fool”です。タロットカードには時代によって色々なバージョンがありますが、現代で見られる主なものは大体同じようなイラストデザインが使われ、愚者には一人の旅装束の若い男と一匹の犬が描かれています。若い男は左上を見上げながら前進しているようですが、その先は崖になっています。

絵柄の意味には様々な解釈がありますが、良い意味では自由・無垢・可能性、悪い意味では軽率・焦り・愚行などと示されるようです。

さて、この曲の名にある”fools”も、愚者と訳します。曲名は、愚者は万人のために詩を歌う、万人の愛を歌う、といった意味になりますね、

どうやらこの愚者は全ての愛を祝福しているようです。よほど高尚なのか、あるいはお節介か。はたまた、本当に愚者なのかもしれません。しかし、おそらく無垢もそこにあるでしょう。他人の愛とは、時に愚かに見えることがあります。

愚者は、自らが愚かであるがゆえに、他人の愚かさも祝福できるのかもしれません。恋は盲目、では愛はなんでしょうか。家族の愛とは?友人の愛とは?その他にも…この問いに対して、万人に当てはまる答えを見つけるのは困難を極めます。

それならば、愚者の詩に誘われて、この祝福の行列に加わるのも良いかもしれません。崖の先に何があろうとも。

それでは、アルバム”Thus spoke gentle machine”、そしてこのセルフライナーノーツを是非楽しんでいただけたらと思います。案内人はthe perfect me西村匠(本人)です。どうぞよろしく!

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