13. It is modern and style of love
熱を冷ますような優しいピアノの音が聞こえてきました。穏やかですがほんのりと悲しいメロディーですね。優しさも悲しさも愛にはつきものですが、さて、この曲名にも"love”がついていますね。それでは M13"It is modern and style of love"のテーマである"love"=愛につ いて考えてみます。
愛についての考察は、勇気がいります。ましてこのような形で行うの は、大惨事にならないか浮き足立ってしまいますが、 、ここはひとつ、 踏ん張って果敢に挑戦してみましょう。
「美しさ」 あるいは「美」が 愛と並んでいる光景はよく目にします。 美しいというのもまた語るには手強い概念ですね(さてどうしたものか)。ところで美しいと感じることと、愛を感じることは遠くないように思います。肉体的な美、精神的な美、他さまざまな美を介して愛を昇華させることで、美そのものへと至るとはプラトンの弁です。美そのものというのは非常に哲学らしい考え方ですが、そこへ至ろうとすることこそ人が愛情をもつ理由だとしています。これが正しいかはさておき、美しさと愛の関連は古くから考えられていたようです。
しかし美しさは寛容なもので、色々なものに寄り添います。ポジティ ブかネガティブか、善か悪かとかそういったことは美しさはあまりこだわりません。またそれ故 気まぐれな一面も持っていて、予期せぬ 時に、はっとするように美しさを感じることもあります。また、同じ対象に二度目は現れないこともしばしばです。
では愛はどうでしょうか。例えば他人の愛を見てみると、愛も寛容で あることがわかります。あるいは美しさ以上に寛容かもしれません。 ただ、愛は、こと他人へ向ける愛に関しては、美しさに比べ自分でも認知しづらいという難点があります。夜盗のように忍び寄ってきては、 気づいた時には足跡だけになっていたり、よく気をつけてその姿を見たとしても、翌日にはまるで気のせいだったかのように跡形もない時もあります。あるとき間違いなく捕まえたと思いそこに留めておいても、よくよく見ると全くの別物だったなんてこともありましょう (やっぱり本物だったなんてことも)。無邪気というか、天邪鬼というか...困ったものです。
ただ、私たちにしても、常に同じ感情で居続けることは きません。 朝どんなに美味しい朝食をとっても、昼にはお腹が空くのは当然のことで、その上朝とは違うものが食べたくなるというものです。見つけたい時に見つからないから認知しづらいと感じるだけで、本当は知らず知らずのうちにすぐそばにあり、私たちの方から留まっていたものを退けているのかもしれませんね。
それでも愛と形容したくなるような感情を心の中に見出す時がありま す。確実にそうだとは言えないけれど、そんな気がする、と言った具合で。不思議とそういう時には、それが本当に愛かどうかなんて大して気 にしないものです。はて、もしかするとそれぐらいの心持ちが丁度良くて、わざわざ確かめることはそんなに重要ではないのかもしれません。
さて、考えてはみたものの、結論 としては「よくわからない」ままになってしまいました。ただもうひとつ言えるのは「よくわからない」ことはそんなに悪くないということです。分かろうとすることも必要かもしれませんが、あまりに考え込んでいては視野は狭くなりま す。考えてもわからないなら 顔を上げて自分の目の前に何があるのか、誰がいるのか、今一度よく見なくてはいけませんね。
そして次に夜盗の気配を感じたら、追いかけず、ベッドで目を開かず にじっと寝たふりをしておきましょう。しばらく知らないふりをしていると、そのうち、愛の方から挨拶をしてくるかもしれません。