ゆるパンクバンド 東のエデンのレコ発ライブに行ってきた。

自分を貫くってちょっとしんどい。好きや嫌い、ちょっとボソッとつぶやいただけでも、ヤイヤイ言われたりする。そういう時、いっそ周りに流されて生きた方が楽なんじゃないかって強く思う。でも、周りのペースに合わせるというのは身を削ってるような気がして、それはそれでつらい。

そんな中で出会ったのが、「パンク」と「ゆるさ」、反する二面を持ち合わせたバンド。彼らは、自分たちの在り方を、着飾らず気取らず、歌い奏で表明する。「周りがどうであれ、自分たちはこうありたい」という姿勢を貫くパンク精神を、「あくまでも自分のペースで。無理はしない」といった、ちょっとゆるいスタンスの中で表現する。

彼らを見ていると、「そういう筋の通し方もあるんだ」って思うし、周りに振り回されてもがいている自分の重荷を軽くしてくれるような、前向きな気持ちになる。そして、明日からも頑張ろうって思える。

彼らは日常系ゆるパンクバンド、『東のエデン』。2016年11月2日に2nd mini album「TARI TARI」をリリースしたばかりのバンドだ。今回は、11月23日に下北沢ろくでもない夜で行われたレコ発ワンマンライブのレポートを書き記す。

当日は、開演19:30という少し遅めの時間だったが、ホールは身動きが取り辛く、多くのリスナーが開演を待ち望んでいた。この日のOA、嘉義源太がホールを温めた後、東のエデンのスタートは2nd mini albumの収録曲でもある「タリタリ」から。重量感と心地良い脱力を感じる、渡邉ただつぐ(Ba)のベースラインに、野村ユミ(Dr)と富岡拓弥(Gt,Vo)が乗っかるようにして始まった。

彼らは1曲目でリスナーをヒートアップさせたり、奇をてらったりするわけではなかった。『東のエデン』にしかない、ゆるいグルーヴが漂うスタート。リスナーも、自然と体を横に揺らす。

その後、続けて2曲を演奏した後、野村ユミ(Dr)の「皆さんこんばんは、東のエデンです!」とこの日初のMC。「本当に今日きてくれてきてくれてありがとうございます。一生忘れないよ!たぶん(笑)。」でホールが笑いに包まれる。

しかし、どこか落ち着きがない野村ユミ(Dr)に対して、富岡拓弥(Gt,Vo)は、「あの、ちょっといいですか? はぁはぁ言ってるけど、そういう時はまず一呼吸おいて、水を飲むとはぁはぁ言わなくて済むよ(笑)」と一言。野村ユミ(Dr)の「じゃぁ、ちょっとやってみる(笑)。あ、ほんとだ、そんな気がしてきた。というわけで、落ち着いたMCでお届けします。」で会場は再び笑いに包まれる。

このなんとなくゆるいMCにおいても、「東のエデンらしさ」を感じる。「何を話す」と計画的に練られたものではなく、ライブの度に生まれるインスピレーション、そしてジャム・セッションのようなその場その場で創造されるライブ感を大事にしているのだと思う。

『東のエデン』は、曲やサウンドで何かを着飾るわけではなく、等身大の自分を音楽に乗せて、表現する。幅広い世代の方に支持されるのは、そんな彼らのグルーヴや在り方に共感する人が多いからなのではないだろうか。

MC後の4曲目は「全開ブギーボーイ」。サビの、耳に残るメロディーと、思わず口ずさんでしまうキャッチーな歌詞が特徴的。ちょっとクランチよりのギターと富岡拓弥(Gt,Vo)の声が溶けるように交わり奏でられる刹那的なサウンドに心地よい浮遊感を感じる。リスナーも心地よく体を揺らし、一緒になってサビを口ずさんだ。

その後、7曲目に『ザ・クロマニヨンズ』のカバー、「雷雨決行」を挟みつつ、この日二度目のMCに。富岡拓弥(Gt,Vo)の「一緒に住んでる、ばあちゃんが一昨日死にまして」という告白に一同衝撃。

「・・・(中略)。なので俺だけ、一人追悼ライブっていう(笑)」「全力で皆さんのために歌おうと思ってたんですけど、3分の1~2くらいはばあちゃんの為に歌いたいなーと、そういっとけばサマになるかな、なーんて(笑)」「・・・(中略)。なので、追悼ライブ始めます! (笑)」を合図に、8曲目「TALK TO ME」を挟んで再びカバーを演奏する。

続く11曲目は「廻るフィギュアルーム」。一度聞いたら覚えてしまう、「廻る廻る・・(中略)」というフレーズ。リスナーは体を揺らし、声を大にして叫ぶ。途中MCを挟みつつ15曲目はパンクなナンバー、「In The Room」。歪んだギターで始まるこの曲は、アップテンポなドラムとドライブ感のあるベースが一体となった、疾走感のある楽曲。テンポにつられるように、体を激しく揺らす者、近くで見たいと前に移動する者など、リスナーのテンションもヒートアップする。

曲が終わると、富岡拓弥(Gt,Vo)は「ありがとうの理由は省略しますけど、こうやって集まってくれてありがとう!!」と感謝を述べ、続けて「それじゃあと2曲、最後まで楽しんでって! ありがとうございました!」と叫び、16曲目「ダンサブル」がスタート。乗りやすいリズム、聴き馴染みやすいコードワーク、しかし、どこかパンクな歌詞がチクリと心に刺さる。ラストに向けて、盛り上がりを見せる中、この日のラストを飾った曲はミュージックビデオにもなっている「Clear up, Cry, and sometimesSong !」。この流れに、リスナー達もこの日一番の盛り上がりを見せる。どこか懐かしさを感じるサウンドが、ライブ終盤に漂う切なさをより引き立てる。しかしそれを打ち消すような、ソウルフルな叫びが心に強く響く。曲が終わると、まだまだ聴き足りないとばかりに、すぐさま始まったアンコールに応えて、「チーチー・パッパ」を披露。サビでは「チーチーパッパー」と全員で叫ぶ。熱気が収まらない中、余韻に浸るようにこの日のライブは幕を閉じた。

今回のレコ発ライブは「俺たちはこれからも、自分達に対して正直な姿勢を貫いていく」という、バンドの在り方を更に強く提示したようなライブだったように感じた。

今後も彼らは彼らのやり方で、自分たちの在り方を表現し続けるんだと思う。10年後も20年後も、同じ気持ちで聴いていられる、また何度も聴きに戻ってきたい、そんな風に思えるライブだった。

文筆/文責 トム

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