90sにベルリン・トランスの貴公子の名に恥じない活躍を見せたCosmic Babyと、00s以降のジャーマン・トランス・シーンで頭角を表してきたSchillerによるユニットBluchel & Von Deylenによる2作目にして最終作。両者ともクラシック音楽の素養ある鍵盤楽器の演奏者だけに、その経験を生かして産み出されたメロディラインの流麗さには、狂おしく心を揺さぶるものを感じます。1作目こそErik SatieやPhilip Glassなどの現代音楽をカヴァーした内容でしたが、本作はCosmic Babyが得意とする宇宙をモチーフにした、彼の1stアルバム『Stellar Supreme』の2004年版と云った内容。トランスというよりもアンビエントの要素が強く出ているアルバムではありますが、トランスの隠れた名曲“M83”のただならぬ寂寥感に、かのベルリン・トランスの貴公子の再来を見る人も多い筈。
最近聴いたアルバムの中でも、衝撃度が半端でなかった作を挙げるなら、文句なく本作です。元々はSkull Discoを運営し、トライバルビートを散りばめた曲によりダブステップのシーンで異彩を放つ存在の彼が放った、まるでプログレッシブ・ロック・アルバムかと見紛うような長尺が4曲収録された作品。まるで現在に蘇ったPopol Vuhの『Affenstunde』か、とでも云いたくなるものがあります。ダブステップの文脈から、このような大きく逸脱を遂げるようなミュージシャンが出てくると思わなかっただけに、初めてyoutubeにて本作を試聴した時、あまりの衝動に本作を含めて数枚のアルバムを一気に注文してしまったほど。たどたどしく響くシンセサイザーのメロディで精神迷路への彷徨いを促すM2の完成度にやられました。