人命尊重に思う 歯界展望:第50巻 第6号 昭和52年12月

ダッカのハイジャック事件も、人命尊重ヒューマニズムの立場で16億の税金、6人の犯人と引きかえに無事終った。

いいかえると日本赤軍ゲリラ、ハイジャッカーに完敗した。今後再犯防止のために万全を期すといわれているが、この問題は75日の後に忘れ去るためにはあまりにも大きすぎる。

それは、“国際的責任を知らざる者”との酷評(英紙デイリー・エクスプレス)に現れた日本のこの処理方法が、西欧をはじめ暴力と脅迫に命がけで抵抗し、自由と民主主義を守り技く諸国と人民に対して与えた、わが国の態度に対するこのような評価をどうするかを含めて、国民一人ひとりが自身の態度で決着をつけなければならない問題と受け止めなければならない。

今、われわれの自由と民主主義、人命の尊重は勝ち取ったというより、敗戦によって与えられた。いつの頃からか言われている“負けるが勝”という事なかれ主義がはびこる。

われわれ国民一人ひとりが本当に、自分の心の底から人命を尊重し、自由と民主主義を守るために脅迫と暴力に立ち向かう決心は、その人のすべてを賭けるに価すると決心することにかかっている。

医科の教育についても同じようなことが考えられる。このような決心を持つ志望者のなかからこそ教育は始められなければならない。そのような人達を育てるため、社会はまた、全力を挙げて援助しなければならない。

親の意志や資力が決定的な要因である現在の大学教育は、すべて改めるべきで、一人ひとりの努力と能力、社会の援助で達成できるように改める以外には、このハイジャックゲリラの暴力、脅迫に対する根源的な対策は考えられないし、医学・医療の健全な発達も望めないのではなかろうか。

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