春・酒蔵へ 新酒を醸す東海の銘蔵元九選

未だ木枯らし吹く年明けから春の新酒お披露目、蔵開きのシーズン到来。それぞれ自慢の逸品を振舞えば、地元のみならず県外からも酒好きが駆け付ける。どこも祭りの様相、町全体が活気付くのは古くから根付いた老舗ならでは。

東岡崎 丸石酒造

特別に扱うのは、繊細な吟醸酒を最高の状態で出荷する為のこだわり。

蔵開き限定「隠し酒」とは、呑兵衛の心を鷲掴みにする出し方。ヨダレが留らぬ…。

「二兎」、開場から一時間で売り切れる。

蔵が支度の土手煮。ここは八丁味噌の本場 流石の妙味。温燗の上撰に合わせば、悶絶の旨さに白目剥く。

社長の道楽、世界のオーディオ名機コレクション。頼んではないが、これでもかのマニア解説の後、往年のクラシック銘板試聴。手入れが往かず、針跳びまくり。残念…。

常滑 盛田酒造 ねのひ

上野間駅からバスに乗り換え、海沿いを進めば盛田酒造に着く。

常滑名代の銘酒蔵、既にメジャーの「ねのひ」ブランド。

熱燗のワンカップ、春浅い海風に負けた身にジワリ染み渡る。

そう、ここは彼の世界的家電メーカー「SONY」の名経営者、盛田さんのご実家也。

生家を改修した記念館、閑静とはこの事を言う。

地元も地元、大高町の銘蔵二軒、まとめて訪問。「神の井」「山盛」自宅から走っても30分。

親父も愛でた銘酒「ねのひ」。蔵町大高随一の誉れ蔵。

受付待ちの客に振る舞うしぼりたて。泣かせる心遣い。

一升瓶、何本分か…。

来る日も来る日も、粛々と測り認める杜氏。仕事ぶりに感服。

「へー、なるほどねー。泡立ってるね。」

「ねのひ」から歩いて2分、勢いあります「山盛酒造」。

大高 山盛酒造

「ねのひ」から歩いて2分、勢いあります「山盛酒造」。

ここの見所は何と言っても有松絞りの大垂れ幕。由来は知らねど見事の一言。

溜息、そして溜息…。

蟹江 山田酒造

蟹江川のほとり、ひっそり佇む老舗蔵。

地の米「旭」に拘り、少量ながら地消を貫く頑固な蔵元。

白壁の蔵、苔生す庭。蟹江川の河風が創業から今も変わらず吹き抜ける。

白壁の蔵の中。瓶詰めを待つ酒の樽。

今はいつ?

暦を疑いたくなる佇まい。

多治見 三千盛

今人気の三千盛。辛口一筋「甘濃い堕酒は酒に非ず」と言ったか言わぬか…。和食を知る杜氏は信念の仕事師。

今の時代には造りたくとも造れぬ邸。石垣造りの土台に凄味すら感じる建物。

朽ちる壁はそのままに、移ろいに抗わぬ在り様が不惑の境地。

江南 勲碧酒造

布袋町とは目出たい地名。良きご縁の期待も膨らむ。

お迎えのシャトルバスも目の前で満席に。南無三、健やかな脚を授かったではないか!歩こう、そして歩こう。復路も歩こう、当然歩こう。

豊田 浦野酒造

普段、無人の四郷駅。今日は駅員さんも特別対応の蔵開き。恐らくは年間最多の集客数。

自動車の町、豊田市でトヨタよりずっと昔から酒を醸し続けるモノ造りの雄。

瑞浪 「始禄 」「小左衛門 」 中島醸造

瑞浪駅からぶら歩き。10分程で川沿いの蔵元にたどり着く。いきなりの威容、ジブリの世界観にも通じるとは自分だけの想いか。

大振りの杉玉にしめ飾り。唯ならぬ貫録に暫し見入る。

20種類の銘柄を誇る、岐阜随一の銘蔵。若いスタッフの感性を大切に、伝統と進化が絶妙に交わる酒造り。ジビエにイタリアン、小洒落た摘まみに酸の起つ若酒が見事にマリアージュ。訪れる客層もどこかシャレオツ。瑞浪の山里、欧州の山岳リゾートに見えて来た…は言い過ぎか。

地酒ブームと言われてから時が経つ。いずれの酒蔵も真っ当に真剣に生き残りを賭けている。訪れると、それを肌で感じられて嬉しい。我慢の夏をやり過ごせば「冷や下ろし」の秋が来る。今年は幾つの蔵を訪ねられるだろうか。千鳥足はご愛敬、朝から酔っ払うふざけたオヤジは、懲りもせず其処彼処に現れますのでご容赦の程。

2017年5月

Created By
兵藤 ミツノリ
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