思いっきりインタヴュー 産經新聞

ブラッシングが歯の生命

ー 先生が歯槽膿漏について書かれた本を読むと、患者にリポートを提出させ、家族に電話して協力を求めるなど大変なおせっかいぶりですが。

「歯槽膿漏の治療は、ブラッシングが中心で、患者の努力が主体です。重症の患者さんの場合、最初の3日間は仕事を休んでもらって日に10回、1回にそれぞれ1時間ほども時間をかけ、新しい方法で間違いなく磨いてもらうなど大変な根気がいります。おせっかいは、その状態を知ることや周囲の理解が必要なためなのです」

― 1日に10時間もブラッシングの勉強。3日だけとはいえ大変ですね。

「ブラッシングは、歯槽膿漏菌の繁殖を抑え、歯茎の血行をよくして抵抗力を高めます。ブラッシングせずに治せれば、それに越したことはありませんが、それ以外に回復の決定打はありません。3日間休んでもらうのは、それまでの生活に区切りをつけ、療養生活に入るしっかりした決意を家族も一緒に持ってもらうのに役立ちます。症状が安定すれば、磨く時間や回数が次第に少なくなっていきます」

ー なるほど。でも、ブラッシングもやみくもにやってはいけないそうですね。

「初診の患者さんには、歯垢(しこう)をきちんと除去できているか赤染め液(歯垢顕示液)で確認してもらいます。長時間歯磨き剤を付けて磨くと歯が削れるので付けず、極軟毛のブラシから始め、磨く狙いを再々変えるなど細かい指導が必要です」

ー こうした先生の治療法は片山式と呼ばれているそうですが、一般にはどんな治療法が行われているのですか。

「次第に私のような時間をかけたやり方が普及してきましたが、まだまだ抜いて入れ歯を入れるのが一般の治療です」

ー どうして両極端の治療法があるのでしょう。

「歯槽膿漏は、軟らかく調理された食べ物に慣れ、歯茎の抵抗力が弱くなって起こる一種の文明病なのです。終戦後しばらく結核、赤痢など細菌の感染によって起こる病気の治療が中心で、軟らかい食べ物といった生活環境が原因となる病気に目が向けられたのは、ごく最近です」

ー どうやって片山式を編み出されたのですか。

「実際の治療の中で工夫を重ねたものです。たとえばブラッシングの効果は、昭和15、6年ごろ、豊中市内の小学校で校医をしていた時、子供たちに虫歯予防のブラッシングを指導するうち、歯茎も丈夫になるのを見て気が付きました。アメリカの医学雑誌にブラッシングの治療効果が発表されたのは昭和25年で、私の方が早く気が付いたのではないかと思います」

ー 開業しながらですから大変だったでしょう。

「当時は虫歯治療と入れ歯を作るのだけが歯医者の仕事と思われていて、虫歯予防や膿漏治療のための生活指導などおせっかいなことで、お金になるどころか嫌がられました。このために患者が減ったこともありました」

ー 先生は本の中で「患者に何が最善か」が治療の基本と書いておられますが。

「11歳の時、母が結核で亡くなりましたが、『感染するから』と面会を禁じられるなど寂しい思いをしました。母を助けられなかった医療が不満で、本当に患者の役に立つ医者になりたかった」

ー ところで先生は、医学や文化系の大学の先生と交流されるなど、医療問題のシンクタンク的な活動もされています。最近話題の移植問題についてはどう思われますか。

「命を助けるためにはなんとしてでもですが、それでドナーを見つけるために医者による脳死の判定が甘くなる危険性もありましょう。密室の判定を避けるシステムを十分に議論すぺきだと思います」

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