食生活と人体の変化 歯界展望:第50巻 第2号 昭和52年8月

ここしばらく、200カイリ、北洋漁業権問題、四島領土権問題などの対ソ外交問題と石油ショック以来の産業エネルギーの問題が重なって、国民は重苦しく陰欝な気持に沈滞している。

マスコミは6月4目の“天声人語”で,日本人の金歯の由来から書き起こし、近時、特に幼児のムシ歯の激増とその予防策として、やたら甘味品の摂取過剰の食生活を考え直すべきであると注意を促した。

200カイリ問題、つまり海産資源問題は、われわれ日本国民にとっては重大問題である。魚肉は獣肉(牛肉)に比べカルシウムについては数倍ないし十数倍、特に骨ごと食べやすい点を取りあげると100倍、200倍の含有量である。また最近、栄養学者の注意する必須脂肪、つまり細胎内の構造脂肪についてみれば、獣肉からの体脂肪(エネルギー脂肪)摂取の不健康さに比べ、魚肉からの脂肪は植物脂肪にみる不飽和脂肪酸(リノール酸,リノレン酸)同様,健康食品である点を注意しなければならない。

特にわれわれ日本国民にとって獣肉食は、ほとんど一世代か二世代の、特に終戦後の急変した食生活であって、急変した食生活が人の退行性変化(デゲネレーション)に最も顕著に現れるのは、歯列の乱れである(W.A.プライス,1945年)などからみても、われわれに対する魚肉の食生変化は重大な問題である。

マスコミは予防のために食生活の注意を呼びかける。予防は弱化を防ぎ、抵抗力の増強を基礎とする。

食生活の考え直しは、われわれ歯科医療に携わる者の今年の重要なテーマであることはまちがいないと思う。この点、魚がダメなら獣肉に、牛肉を輸入して、という考え方は誠に危険である.。エネルギー問題で生産が落ちるので肉は賀えないではなく、牛肉は良くないから買わない。減った魚の食べ方を考え直す発想に切りかえるべきではなかろうか。

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